民訴法228条4項 二段の推定に対する反証・ ・ ・考慮すべきキーワードとは!? – 司法試験-司法書士試験-行政書士試験とエトセトラBLOG

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民訴法228条4項 二段の推定に対する反証・ ・ ・考慮すべきキーワードとは!?

投稿日:2017年4月14日 更新日:

民訴法228条4項の二段の推定に対する反証

民訴法228条4項の二段の推定に対する反証に関して述べさせていただきます。

 

民訴法228条4項は,一段目の推定も,二段目の推定も,事実上の推定ですから「立証責任の転換」はなく,被告に否認されたら,被告の立証活動としての反証活動に対して,原告は本証を行わなければなりません。

 

すなわち,一段目の推定の否認反証に対しては,私文書の当該署名,押印が被告本人の意思に基づく署名,押印であることにつき,原告は本証をしなければなりません。

 

また,二段目の推定の私文書の作成が,被告本人の意思に基づいて作成された文書ではないと否認反証されたら,当該私文書が被告本人の意思に基づいて作成された文書であることにつき,原告は本証しなければなりません。

 

本証は,裁判官に確信を抱かせるまでの心証度を要求する立証活動です。
これに対して,反証は,裁判官の確信を動揺させ,真偽不明の状態にすればよい立証活動です。事実が存在しないことを裁判官に確信させる必要はなく,あくまで裁判官の事実が存在するとの確信の心証をぐらつかせ,事実の存否不明,真偽不明の状態に裁判官の心証をすれば足りる立証活動です。

 

反証は,文書の成立の真正に疑念を生じさせれば足り,文書の不真正まで立証する必要はないということです。
さらに簡単に言うと,偽造であると確信させる必要はなく,偽造かもしれないとの合理的疑いを,裁判官に生じさせれば足りる立証活動です。

 

以下、反証について詳述します。

 

第1 民訴法228条4項の一段目の推定の前提問題に対する反証

先ず、民訴法228条4項の一段目の推定の前提問題に対する反証です。

これは,本人は,署名をしていないし,また押印もしていない,さらに印影も自分の印章のものではないと否認する場合の反証です。

 

1(本人の印章,署名でないことの反証)

私文書の印影に対応する印章が,第三者が勝手に印鑑登録した印章であるとか,家族等の共用,共有にかかる印章であって,本人が,自分ひとりで所有管理し使用している印章でない場合等,そもそも「私文書は,本人又はその代理人の署名又は押印があるときは,真正に成立したものと推定する。」と規定する民訴法228条4項の「押印」に対応するところの「印章」じたいに該らないとする反証活動です。
また,本人は全く署名したことはないとの反証です。

 

反証の具体例としては、
(1) 第三者が勝手に印鑑登録した印章
(2) 家族との共用又は共有にかかる印章
(3) 第三者との共用又は共有にかかる印章
(4) 第三者による署名
であるとの反証を挙げることができます。

 

2 (本人の印章の印影ではないことの反証)

第三者が,被告本人のものと同一の印影を有する印章を入手して,これを押印した蓋然性が高いとする反証。
これは,文房具店で販売されているような三文判を,印鑑登録してしまっているような場合に生じ得る事案における反証です。

 

 

第2 民訴法228条4項の一段目の推定に対する反証

次に、民訴法228条4項の一段目の推定に対する反証です。

これは、印章を紛失した,盗取盗用された,預託目的外に使用された等の反証をします。
これにより,[被告本人の意思に基づく]押印を否認します。

 

具体的には,
(1) 印章紛失
(2) 印章の盗取盗用
(3) 預託目的外使用
(4) 私文書の記載内容,体裁,作成経緯の不合理,不自然性
(5) 強迫されて署名した(署名の場合)
等の事実を抽出して反証を展開します。

 

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(2)の「印章の盗取盗用」にいては,
①印章の保管状況
②印章の種類
③印章の使用された状況
④盗取者と印章専用者(印章の所有者)との関係
等の事実を抽出して,反証を展開します。

反証においては,家族の者が,印章を入手しやすい状況であったのか否か,実印(印鑑),認印(三文判)いずれの印章であったのか等事実を拾っていくことになります。

 

 

第3 民訴法228条4項の二段目の推定に対する反証

最後に、民訴法228条4項の二段目の推定に対する反証です。

これは、署名,押印後に被告の意思に基づかない(合意のない)内容の私文書が作成されたとする反証です。

 

例えば,
(1) 「白紙」に署名,押印後,合意に反する条項等の記載がなされた
(2) 署名,押印後,私文書の内容の改ざん,変造等がなされた
との事実を抽出して,反証を展開します。

 

 

[若干の説明] 本証・反証・・「立証活動としての反証活動」

冒頭において,「反証」と言わず,わざわざ「立証活動としての反証活動」と回りくどい言い方をしたのは,補助事実には,主要事実と異なり,本来的には立証責任(客観的証明責任)を観念しえないためです(「本証」は立証責任を負担する者の立証。「反証」は立証責任を負担しない者の立証。「本証」「反証」は本来的には,これらを意味する。)。裁判所職員総合研修所監修の民事訴訟法講義案(三訂版)が,補助事実には本証・反証の観念を持ち込む余地はないとして,「立証活動としての反証活動」という文言を使用していることに依拠したものです。

 

ただ,ここまで認定考査において厳密に言わなくともいいような気がします。言わんとするところは,本来の本証と反証の概念とほとんど同じだと思われます。裁判官に確信させるのが本証であり,その裁判官の確信をぐらつかせ動揺せしめ疑念を生じさせるのが反証です。言わんとするところは同じでしょう。
類書の法律書においても、「反証」という用語が散見されます。
したがって,本文記載においても,厳密な使い分けはしておりません。

 

認定考査においては,時間も答案用紙のスペースにも限りがありますから,単に「本証」,「反証」と書いても,問題ないと私個人は思います。そもそも認定考査の答案採点者である弁護士の先生も,「立証活動としての反証活動」という厳密な概念定義自体に,馴染みがない,知らないように思われます。
したがって,繰り返しになりますが本文記載においても,厳密な使い分けはしておりません。

 

また訴訟においては,これは一段目の推定に対する反証活動であるとか,これは,二段目の推定に対する反証活動であるとか,明確な区分けを意識した反証活動が行われているわけではなく,ただ被告本人の反証に有利で重要な間接事実、補助事実の主張とこれの立証が,代理人によって行われているのが多くの現実だろうと思います。

 

また,民訴法228条4項の一段目の推定の前提問題に対する反証と,同条同項の一段目の推定そのものに対する反証を区別せずに,両者ひっくるめて民訴法228条4項の一段目の推定に対する反証の中で論じている文献が多く,これらを区別することに特段の有意味を見出せないかもしれません。

 

しかし,頭の整理には,「非常に」役立つと思います。そのため私は,説明の便宜上区別して説明しました。

 

ただ,認定考査においては,特別の指示がない限り、両者ひっくるめて民訴法228条4項の一段目の推定に対する反証と考えて解答されて問題ないと思われます。むしろ,時間も答案用紙のスペースにも限りがありますから,ひっくるめて解答した方がよろしいでしょう。予備校等の解答例もそうしているのではないでしょうか。

 

(余談) 二段の推定に対する反証の論点を刑法、刑事訴訟法の視点で考えてみる

民訴法228条4項の二段の推定に対する反証の論点は,刑法、刑事訴訟法の視点で考えると分かり易いと思います。

 

民訴法228条4項の一段目の推定の「前提問題」に対する反証は,ごく簡単に言うと,筆跡,印影の同一性の問題で,印影,筆跡の同一性が認められなければ構成要件該当性じたいが認められない。

 

筆跡,印影の同一性が認められると,民訴法228条4項の一段目の推定の構成要件該当性が認められる。
構成要件該当性が認められると違法性,有責性が推定される。
すなわち,署名,押印が本人の意思に基づくものと推定される。これが刑法の違法性,有責性が推定されるのと似ています。

 

そして,違法性阻却事由,責任阻却事由に相当するものが,民訴法228条4項の一段目の推定に対する反証であり,民訴法228条4項の二段目の推定に対する反証です。

 

また,犯罪の立証における証明責任を検察官が負い,被告人は負わないのとも似ています。
これは,民訴法228条4項は,一段目の推定も,二段目の推定も,事実上の推定ですから「立証責任の転換」はなく,被告に否認されたら,被告の立証活動としての反証活動に対して,原告は本証を行わなければならない,これと似ています。

 

そして,民訴法228条4項の一段目の推定,二段目の推定に対する,被告の立証活動としての反証活動は,違法性阻却,責任阻却の争点形成責任に類似しています。

 

「文書の成立を否認するときは,その理由を明らかにしなければならい。」と民訴規則145条は規定しているからです。しかも,被告の立証は,反証で足りる。これも刑事訴訟法と「感覚的には」類似しています。                               以  上

 

 

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