択一憲法 その2・国会議員の不逮捕特権
投稿日:2017年5月21日 更新日:
国会議員の不逮捕特権 その2
この択一問題は難しい問題です。知識的観点からいって難しい問題です。
間違っても全く気にする必要はありません。
ただ,一回知識として触れておくだけで,現場で肢が切れると思い作成した次第です。
肢のオについては,知らなくても全く問題はありません。記憶しておく必要はありません。
肢のア・イ・ウ・エについては,軽く触れておくと役に立つことがあると思います。
正解は,参考文献の下に記載してあります。
次の対話は,国会議員の不逮捕特権に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち,明らかに誤りと考えられるものはいくつあるか。
教授 : 憲法第五十条は「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定していますが,緊急集会中の参議院議員に対しても,この不逮捕特権が認められていますか。
学生 : ア 緊急集会中の参議院は国会の代行機能を果たしますので,その期間中の参議院議員に対しても不逮捕特権が妥当すべきものと解されます。
教授 : 憲法第五十条の「逮捕」とは,刑事訴訟法上の逮捕に限定されますか。
学生 : イ いいえ,限定されません。 憲法第五十条の「逮捕」には,刑事訴訟法上の逮捕,勾引,勾留をはじめとして,行政上の身体拘束も含めて,公権力による身体拘束一般を広く含むものと解されています。ただし,確定判決の自由刑執行のための収監は不逮捕特権に含まれません。
教授 : 憲法第五十条の不逮捕特権は,議員に対して訴追されない特権を認めていますか。
学生 : ウ いいえ。憲法第五十条の不逮捕特権は,議員に訴追されない特権を認めていません。
教授 : 不逮捕特権保障の目的を,議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにするとの立場(「議員の身体的自由保障説」)から,期限付逮捕許諾を肯定するための理論構成として,どのようなものが考えられますか。
学生 : エ 逮捕許諾を全体として拒否できる以上,条件・期限を付けることも可能である,との理論構成が考えられます。
教授 : この理論構成をとって,議員の期限付逮捕許諾を認める見解に対しては,どのような反論が考えられますか。
学生 : オ 期限付逮捕許諾は,逮捕の許諾と同時に期限経過後の議員釈放要求を含む許諾であると考えられます。
しかし,憲法第五十条後段は「会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定するのみで,会期中に逮捕された議員の釈放要求についてはこれを認めていません。
しがたって,期限経過後の議員釈放要求を含む期限付逮捕許諾については,憲法はこれを認めていないとの反論が考えられます。
1 0個 2 1個 3 2個 4 3個 5 4個
[ 参 考 ]
憲法 第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
国会法第三十三条 各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。
ここまでが問題,ここから先は解答
教授 : 憲法第五十条は「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定していますが,緊急集会中の参議院議員に対しても,この不逮捕特権が認められていますか。
学生 : ア 緊急集会中の参議院は国会の代行機能を果たしますので,その期間中の参議院議員に対しても不逮捕特権が妥当すべきものと解されます。[←正しい肢]
教授 : 憲法第五十条の「逮捕」とは,刑事訴訟法上の逮捕に限定されますか。
学生 : イ いいえ,限定されません。 憲法第五十条の「逮捕」には,刑事訴訟法上の逮捕,勾引,勾留をはじめとして,行政上の身体拘束も含めて,公権力による身体拘束一般を広く含むものと解されています。ただし,確定判決の自由刑執行のための収監は不逮捕特権に含まれません。[←正しい肢]
教授 : 憲法第五十条の不逮捕特権は,議員に対して訴追されない特権を認めていますか。
学生 : ウ いいえ。憲法第五十条の不逮捕特権は,議員に訴追されない特権を認めていません。[←正しい肢]
教授 : 不逮捕特権保障の目的を,議員の身体の自由を保障し,政府権力によって議員の職務遂行が妨げられないようにするとの立場(「議員の身体的自由保障説」)から,期限付逮捕許諾を肯定するための理論構成として,どのようなものが考えられますか。
学生 : エ 逮捕許諾を全体として拒否できる以上,条件・期限を付けることも可能である,との理論構成が考えられます。[←正しい肢]
教授 : この理論構成をとって,議員の期限付逮捕許諾を認める見解に対しては,どのような反論が考えられますか。
学生 : オ 期限付逮捕許諾は,逮捕の許諾と同時に期限経過後の議員釈放要求を含む許諾であると考えられます。
しかし,憲法第五十条後段は「会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定するのみで,会期中に逮捕された議員の釈放要求についてはこれを認めていません。
しがたって,期限経過後の議員釈放要求を含む期限付逮捕許諾については,憲法はこれを認めていないとの反論が考えられます。[←正しい肢]
憲法 第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
国会法第三十三条 各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。
[参考文献] 憲法 第6版 芦部信喜 著 高橋和之 補訂 岩波書店
日本国憲法論 佐藤幸治 著 成文堂
憲法 [第3版] 佐藤幸治 著 青林書院
憲法Ⅱ 第5版 野中俊彦 中村睦男 高橋和之 高見勝利 著 有斐閣
憲法判例百選Ⅱ [第4版] 芦部信喜・高橋和之・長谷部恭男 編 有斐閣
憲法判例百選Ⅱ [第6版] 長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿 編 有斐閣
憲法Ⅰ 総論・統治 第2版 毛利透・小泉良幸・浅野博宣・松本哲治 著 有斐閣
など
[ 正解 (1) 誤りの肢は 0個 ] アイウエオのすべての肢が,正しい肢です。
なお,以上の記述の正誤につきましては,ご自身の基本書,テキスト等により是非ご検証,ご確認ください。 以 上
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執筆者:略して鬼トラ
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